松本市美術館での展覧会3

『ここも そこも どこかのここで』展

この展覧会で展示した作品は3つあります。
1つ目は『組替え絵画/私たちの作品を見てくださいー松本市美術館にて 2012』作品。

出展作品は『組替え絵画/私たちの作品を見てください』のシリーズで、全長20M×高さ/幅4Mの展示空間に、高さ/幅が空間と同サイズの正方形キャンバス(4×4M)をスクリーン状に設置し、空間を遮断します。キャンバスは両面(表と裏)から鑑賞でき、両面が透けて見えるインスタレーション展示です。遮断された空間は、片側は暗く、片側は明るく、暗い空間に浮かび上がる白いスクリーン/影の絵画と、明るい空間に輝く銀白色の光の絵画です。
それらは全てワークショップ参加者の行為の痕跡です。

(スクリーン/影の絵画)

(光の絵画)

この作品は、画面の描画表情と空間要素が関係し合い、空間全体で絵画を形成します。スクリーン(キャンバス)から透けて見える人の姿と、場所により異なる光の反射などの描画表情が、鑑賞者の視点/価値観/絵画への既存の概念などによって意味付けられ、「空間絵画」として完成されます。

これは『組替え絵画』シリーズ作品で、八王子市夢美術館、上野の森美術館、飯田市美術博物館などでも、違う作品形態で展示されている作品です。
この作品の制作方法は、ワークショップ『アシノウラ美術館@MCMA』(松本市美術館、対象:中学生以上)で出来た素材を、前沢(作家)による最小限の制作行為(トリミング、ソーイング)で、空間から導き出したサイズ4×4Mの絵画に制作し展示しました。

ワークショップでは、10×10Mサイズの綿布(カンバス地)に白色絵具で全身での絵具体験を行ないました。
(絵具提供:ターナー色彩株式会社)


ワークショップでは、床に敷かれた巨大な綿布の上で、白色と銀色の絵具で、参加者が全身で描画行為(原初的欲求/身体性/偶然性)を行います。そのようなワークショップで出来た素材には、「描画行為とコミュニケーション」など人間/社会の様々な関係性が、画面の表情として顕在化されます。

この作品では、ワークショップで出来た綿布が空間要素を取り込み、一つの平面作品として組み合わされることにより、「身体性/物質性と表現」「現象と場」「具象と抽象」「意識と無意識」「日本と海外との思考」など絵画が持つ様々な要素が、「あらゆる関係性」として絵画作品の中に顕在化されます。そこに鑑賞者自身が「どのような関係性」を見い出すか、既存の意識/思考/概念を問いかけます。

2つ目は『交換絵画』作品。
これは信州大学とのプロジェクトです。信州大学での講義や学園祭で事前に行なわれた同シリーズの絵具ワークショップでの素材を、学生によってトリミング/カット/額装した「作品」に仕立て、松本市内の店舗などに実際に「展示されている作品」と交換し、「ワークショップの作品」は店舗に、店舗の「作品」は美術館で会期中展示されました。

(美術館で展示された「店舗の絵画」)

(店舗で展示された「ワークショップの絵画」)

(『交換絵画』の前に、店舗で展示されていた「「店舗の絵画」)

3つ目は『拡散絵画』作品。
これも同信州大学とのプロジェクトで、交換絵画より小さい目の絵画作品(ワークショップの素材を額装)を、市内の多数の商店などに期間中展示してもらうというものです。会期中は、会場でも交換絵画を、鑑賞者は自由に制作できました。




『交換絵画/拡散絵画』での面白さは、商店に「交換/拡散絵画」の交渉に行くことで広がる波紋です。会話やつながりが生まれ「コミュニケーション」が始まります。そして交換/拡散された「絵画」によって、様々な人間模様や物語/歴史など「見えなかった/気が付かなかった事象」が発見されます。

(拡散絵画の交渉で頂いた「さぼてん」)

(拡散絵画の交渉での様子)

『交換/拡散絵画』の様子は、信州大学ブログでも詳しくご覧頂けます。
http://artcom2012.blog.fc2.com/category2-2.html